ベトナムの使用済み自動車解体処理地域における化学物質汚染(第二報) -In vitro バイオアッセイ/化学分析統合手法によるダイオキシン様物質モニタリング-

講演予稿
高柳 知佳; 宮井 理紗; Nguyen Minh Tue; 鈴木 剛; 松神 秀徳; Pham Hung Viet; 酒井 伸一; 高橋 真 (2015) 第24回環境化学討論会要旨集, pp. 1A-01

【はじめに】
 近年、資源の需要や経済成長に伴い、先進国で発生する電子・電気機器廃棄物(E-waste)等が再資源化を目的としてアジアの途上国・新興国へ大量に輸出されており、現地におけるそれら廃棄物の不適切な処理が問題となっている。我々の研究グループは、これまでベトナム北部のE-waste 処理地域において母乳やダストから高濃度のPCBs、PBDEs、ダイオキシン類縁化合物(DRCs)を検出するとともに、ダイオキシン様活性を有する未知物質の存在を明らかにした1,2)。一方で、途上国においてE-waste以外の廃棄物について、そのリサイクル活動に伴う有害物質の発生やヒトへの暴露を調査した例はほとんどない。とくに、使用済み自動車(end-of-life vehicles:ELV)は、近年資源回収の需要が高まっており、途上国での解体や再資源化活動が活発化している。ELV はE-waste と同様に様々な再利用可能部品や有価資源を含んでいるが、PCBs やBFRs、重金属類等の有害物質も含んでおり、解体・再資源化にあたっては適切な取扱いが必要である3)。途上国におけるこれらの資源の回収作業では、環境負荷に配慮しない粗雑な解体や、野焼きやなどの不適切な方法でELV 処理が行われているため、有害物質による周辺環境の汚染や、作業従事者への暴露影響が懸念されている。
 第一報では、ベトナム北部のELV解体処理地域における、ダスト中のPCBs、PBDEs、DRCs(PCDD/Fs、PBDD/Fs、MBPCDD/Fsを含む)の濃度を測定し、汚染実態の解明とヒトへの暴露リスクの評価を行った。本研究では、ダイオキシン様化合物の総量とそのリスクを包括的に評価するために、これまでの化学分析に加え、in vitro バイオアッセイであるDR-CALUXを用いて、ダスト中の総ダイオキシン様活性を測定し、既報のE-waste処理地域の結果4)との比較を行った。さらに、これら化学分析及びバイオアッセイの結果を統合して、ベトナムELV処理地域における汚染実態や発生源の解析、毒性寄与物質の同定や、暴露リスクの評価を行った。

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