2025年度は特別研究(卒業論文)テーマとして、4テーマを用意しています。

循環型社会形成に向けた温室効果ガス排出勘定とライフサイクル分析

循環型社会の形成は、脱炭素社会の構築と協調して進めていくことが重要です。廃棄物・資源循環分の循環施策によるGHG排出削減効果をライフサイクル分析の手法を用いて評価しています。食品ロス削減やプラスチックの素材転換、バイオプラスチック利用などが温室効果ガスの観点から検討が求められる対象です。

(卒論テーマ1:自動車プラスチックの循環利用のライフサイクル分析)

使用済自動車からプラスチック等を回収するインセンティブ制度が2026年に開始するなど、自動車への再生プラスチック利用の促進が進められています。本研究では、使用済自動車の解体工程のプラスチック回収促進効果を評価するため、自動車用途のプラスチック製造、使用後の解体工程のプラスチック選別から自動車シュレッダーダスト(ASR)の処理まで含めたライフサイクル分析を実施します。

ごみ組成から視た市民のライフスタイルと環境政策効果に関する研究

循環型社会を実現するには、人や企業の行動が重要です。人や企業の資源消費・廃棄行動の実態を把握し、その影響要因を抽出することに取り組んでいます。また、要因間の関係を社会行動モデルとして記述し、行政等による施策の効果を評価し、制度設計に活用することを目指しています。その一次情報としてごみ組成調査を重視し活用しています。

(卒論テーマ2:プラスチックごみのバイオマス割合のモニタリング手法開発)

本研究では、ごみ組成調査を活用した廃プラスチックのバイオマス実含有率のモニタリング手法(試料採取、選別・異物除去、破砕・縮分、14C分析)を開発・提示します。昨年度は、選別・異物除去、破砕・縮分工程に取り組んでおり、今年度は、試料採取段階に焦点をあてます。特に、どの程度の量のプラスチックごみ試料を採取すれば、代表性を確保できるのかについて、数理モデルの作成と、実際のごみ試料の実測データとの比較検証により、検討していきます。また、複数の自治体で開発した手法を適用します。

循環型社会形成と化学物質制御のシステム解析

循環型社会において、資源の循環とともに、有害物質までもが、意図せずいつまでも循環し続けることは、好ましくありません。循環型社会において化学物質のリスクを管理するには、資源化工程を含む化学物質のライフサイクルの各工程からの環境排出や、自然環境における化学物質の挙動を把握することが必須です。そこで、化学物質やその含有製品のフロー解析に基づく排出インベントリの推定や、環境動態モデルを用いた環境中濃度や曝露量の予測、観測データとの比較検証や統計解析を行っています。

(卒論テーマ3:PFAS含有廃棄物の物質フロー・環境動態モデル評価)

PFASは、泡消火剤や撥水・撥油剤などとして様々な用途の製品に使われています。また、PFASを除去するために使われた活性炭などにもPFASが含まれています。これらが廃棄物になった際には、PFASを適切に処理し、環境汚染を防ぐことが必要です。そのため、本研究課題では、どのような廃棄物に、どの程度の量のPFASが含まれているのか、そのマテリアルフローを定量的に明らかにします。また、種々の処理プロセス(メタン発酵、ごみ固形燃料製造、焼却、埋立etc)での挙動を把握し、排ガスや排水として環境に排出された後の運命予測に取り組みます。

教育研究の環境保全とキャンパスサステナビリティ

大学の教育研究活動に伴う廃液・排水や廃棄物の管理など、京都大学が事業者として直面する種々の環境管理上の課題解決に取り組むとともに、その知見を国内外の教育研究機関に敷衍し、サステナブルキャンパス実現を促進する研究を行います。

(卒論テーマ4:学内実験廃液・廃棄物の適正処理に関する環境保全効果の評価)

大学の研究・教育活動で発生する実験廃液・廃棄物は排出者責任の原則に則り適正に処理されることが求められます。本研究では、2025年度から学内処理から外部委託されることになった無機廃液を対象にしたライフサイクルアセスメントや、フィールド調査や環境負荷データを活用した学内プラスチックの分別リサイクル促進策の検討と効果検証などの評価を行います。