2023年度は特別研究(卒業論文)テーマとして、4テーマを用意しています。

  • 循環型社会形成に向けた温室効果ガス排出勘定とライフサイクル分析(1テーマ)
  • 市民のライフスタイルと環境政策効果に関する研究(2テーマ)
  • 教育研究の環境保全とキャンパスサステナビリティ(1テーマ)

循環型社会形成に向けた温室効果ガス排出勘定とライフサイクル分析(テーマ1:脱炭素社会の静脈フローモデル開発)

循環型社会の形成は、脱炭素社会の構築と協調して進めていくことが重要です。廃棄物・資源循環分野における温室効果ガス(GHG)排出インベントリの精緻化に向けて、各種廃棄物の排出係数を推定するとともに、種々の循環施策によるGHG排出削減効果をライフサイク分析の手法を用いて評価しています。

(テーマ1)本研究では、2050年カーボンニュートラル社会と整合する日本の物質フロー構造を解明することを目的とし、カーボンニュートラルを見据えた素材産業の生産技術変化を踏まえた、廃棄物処理・リサイクル工程からのGHG排出量を算定するボトムアップ型のモデル群を開発します。本年度は、昨年度開発したモデルをベースとして、素材産業における廃棄物利用を線形最適化モデルとして定式化することや、一般廃棄物の広域処理の最適化モデルの改良に取り組みます。

市民のライフスタイルと環境政策効果に関する研究
(テーマ2:ごみ組成調査データのプラスチック関連施策評価への応用)
(テーマ3:二次電池への代替促進と使用済電池の適正排出に関するフロー分析)

循環型社会を実現するには、人や企業の行動が重要です。人や企業の資源消費・廃棄行動の実態を把握し、その影響要因を抽出することに取り組んでいます。また、要因間の関係を社会行動モデルとして記述し、行政等による施策の効果を評価し、制度設計に活用することを目指しています。

(テーマ2)自治体が実施してきた家庭ごみ組成調査データを収集・整理し、プラスチックごみに関連した各種施策の効果を、ごみ組成調査データから検証することに取り組みます。データ整理にあたっては、ごみ組成区分が自治体によって異なるため、統一的な区分の検討をします。評価対象とする施策としては、2020年7月より全国一律で導入されたレジ袋有料化を取り上げます。また、2022年4月より施行されたプラスチック資源循環促進法によって導入が進みつつあり、京都市でも2023年4月から開始される、「容器包装リサイクル法ルートでのプラスチック製品の回収」を、先行自治体のデータをもとに推定することを試みます。

(テーマ3)家庭系の使い捨ての一次電池から繰り返し使える二次電池への代替が伸び悩んでいる中、その要因や代替可能な用途のポテンシャルを明らかにしつつ代替促進を図ることが求められます。また、家庭系の使用済電池の排出方法は多様化・複雑化しており、発火事故等に繋がらない適正な排出ルートへの誘導施策が重要です。本年度は、市民の電池・電池内蔵製品の使用・退蔵状況や、回収拠点・リサイクル施設等の排出実態調査を通じて使用済電池の物質フローを推定します。また、一次電池から二次電池への代替促進策(入口側)と適正排出・回収ルート構築(出口側)効果について資源循環率等の物質指標で評価します。

教育研究の環境保全とキャンパスサステナビリティ
(テーマ4:学内プラスチック対策)

大学の教育研究活動に伴う廃液・排水や廃棄物の管理など、京都大学が事業者として直面する種々の環境管理上の課題解決に取り組むとともに、その知見を国内外の教育研究機関に敷衍し、サステナブルキャンパス実現を促進する研究を行います。京都大学は2020年2月に「京都大学プラスチック対策実施プラン」を策定し、プラスチックの減量や分別・リサイクル、バイオマス素材の利用推進等を掲げています。また、2022年4月から施行されたプラスチック資源循環促進法において、京都大学は年間250トン以上の廃プラを排出する多量排出事業者に該当し、排出抑制や再資源対策の目標の設定が求められます。

(テーマ4)本研究では、これらの対策に資するため、プラスチック類の実験系・生活系など由来別・発生源別の廃棄実態の把握に取り組み、発生抑制可能量の推定や、分別・リサイクル策の検討とその効果検証を試みます。本年度は2021年度からの部局別のごみ組成調査を継続しつつこれまでのデータを解析し、分別状況の悪い部局・建物に着目した学生・教職員への分別排出に関する啓発活動・行動介入策の効果測定にも取り組みます。